進化する闇バイト勧誘の手口

本サイトでは、これまで闇バイト勧誘のさまざまな特徴や注意すべきポイントなどを紹介してきましたが、特殊詐欺の形態や勧誘の手口は日々進化しています。

ここでは特殊詐欺に係る闇バイト募集の最近の傾向ついてご紹介します。

[取材協力:ディップ株式会社]

闇バイト募集、最近の傾向は?

闇バイトが登場した当初は、一目で「怪しい求人」とわかるような募集内容が多かったですが、最近ではごく普通の求人広告を装う傾向が強くなっています。

たとえば、「架け子」の募集なら、「コールセンターでの仕事です。スクリプトどおりに話すだけです」といったように、仕事内容を具体的に示して、応募者が不安を抱かないよう工夫する動きがみられるようになりました。

また、バイトの報酬にも変化が。本サイトでは「高額報酬、高収入が危ない」と警告してきましたが、その裏をかくように受け子の仕事などを日給1万円程度で募集するケースも出てきているのです。高すぎないバイト代に受け子とは気づかずに応募して犯罪に加担し、逮捕に至った例もあります。

一方、応募者の不安を取り去るために、さまざまな「権威づけ」をする傾向も見られます。例えば「上場企業の仕事です」「行政の許可を得ている作業です」など。真っ赤なウソを並べ立てているだけですが、信用して応募してしまう人も多くいるようです。

では、手口が巧妙化する闇バイトから身を守るには? それは「闇バイトとはこういうもの」という思い込みを捨て去ることです。本サイトで紹介してきた闇バイトの一般的な特徴を知っておくことは大切ですが、それに当てはまらない闇バイトがあることも肝に銘じておきましょう。求人に応募する時は常に五感を働かせて、怪しいところがないかチェックを怠らないことです。

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勢いを増す「トクリュウ」に注意!

特殊詐欺関連の新しいキーワードとして、最近よく耳にするのが「トクリュウ」。トクリュウとは「匿名・流動型犯罪グループ」のことで、「自分たちが何者かを名乗らず、匿名性の高いSNSなどで実行役を集めて、特殊詐欺などの犯罪を行う集団」を指します。

特殊詐欺にとどまらず、ここ数年、全国で発生している強盗・強盗殺人などの凶悪事件も、その多くがトクリュウによるものです。首謀者や指示役は決して姿を現さず、応募してきた者たちをたくみに操って犯罪を行わせ、あげくの果てに彼らを使い捨てにするのです。

トクリュウが実行役を募る手段として利用しているのがSNSでの闇バイト募集です。警察庁の発表によると、2023年に摘発された特殊詐欺の実行役のうち、4割以上がSNSの闇バイト募集情報等を通じて加担していました。求人サイトやネット掲示板経由も合わせると5割に迫る勢いです。闇バイトを通じて知らないうちにトクリュウの手先になるというケースが多いものと思われます。

トクリュウによる犯罪の増加に、警察も手をこまねいているわけではありません。警察庁はインターネット上における違法・有害情報に対し、警察への通報・管理者へ削除依頼等を行う、インターネット・ホットラインセンターを運用しており、2023年9月末から対象となる情報に「犯罪実行者募集情報」(闇バイト情報)を追加しました。23年12月末までの3カ月間で確認された「犯罪実行者募集情報」(闇バイト情報)は4411件におよび、その後削除された投稿を除く2979件に削除を依頼し、うち2136件が削除されました。

ただ、運営側の判断で削除されなかった情報もあり、削除依頼をするまでに応募してしまうケースもあるでしょう。また、警察が監視を強化しても、犯罪者たちは新たな手口を編み出して、今後もSNS等から闇バイト募集情報を発信し続けると考えるべきです。

トクリュウの魔の手から自分自身を守るには、やはり日ごろからSNSの情報には注意して接するというスタンスが必要です。あらためて本サイトに記載している闇バイトの特徴や特殊詐欺に関わらないための注意点等に目を通しておきましょう。

シニア層も闇バイト募集の対象に

もう1点、闇バイトをめぐる新しい傾向として、募集のターゲットが広がっていることが挙げられます。最近では「年齢問わず」という闇バイト募集広告が増えており、その結果、50代以降のシニア世代が応募するケースが出てきているのです。

「劇場型」の犯罪である特殊詐欺の手口が複雑・巧妙化するなかで、架け子や受け子の役割も多様化し、高齢のメンバーを必要とするケースが増えているからでしょう。

直近の例では、特殊詐欺の「受け子」となり合計で約1600万円をだまし取ったとして、84歳の無職の男が逮捕され、2023年6月に懲役3年6月の実刑判決を受けています。

背景には、アルバイト募集に応募するシニア層が増えているという事情があります。ディップ株式会社によると、同社のアルバイト・パート求人情報サイト「バイトル」の利用者層は最近では30歳以上が4割にも上っており、うち50代以上の伸び率が最も高くなっています。

高齢になっても働きたいというニーズの高まりとともに、特殊詐欺に加担する高齢者は今後も増えていくことでしょう。スマホの操作に不慣れな人の場合、求人情報を閲覧する際に誤って画面をタップし、募集内容をきちんと確認しないまま応募してしまったり、情報リテラシーが不足していることで、知らずに闇バイトに巻き込まれたり、といったことも考えられます。

シニアの皆さんは、ネットを介したアルバイト応募の際には十分に注意し、判断が難しいことがあれば、ご家族やご友人など身近な方にぜひ相談するようにしてください。

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