NEW【保護者向けコラム】 我が子が闇バイトに関わる前に  坂下千里子さんとNPO代表が語り合う

SNSなどで高額な報酬をうたい、強盗や詐欺に誘い込む闇バイト。甘い言葉に誘われた青少年が、いつの間にか犯罪やトラブルに巻き込まれるケースが後をたちません。2人の子どもを育てるタレントの坂下千里子さんが、東京都立川市で若者を支援する認定NPO法人育て上げネットを訪ね、理事長の工藤啓さんと子どもを守るための対処法を語り合いました。

坂下さんが学んだ、子を守る3つのポイント

  • その誘い、怪しくない? 子どもと一緒にチェック
  • 家庭で抱え込まない 保護者が地域で友達づくり
  • 相談できる場所や人 事前に把握すれば安心

息子のスマホに怪しい募集メールが届いた!

坂下 先日、息子のスマホにショートメールが届いたんです。「ママ、闇バイトからメールが来た!『月給68万円』って書いてある!」と無邪気に報告されて。スマホの使い方については日頃から怖さを伝えていて、「無視だよ無視!」と声をかけました。このメールは電話番号でランダムに送られたものだと思いますが、闇バイトはどんなふうに広がっているのでしょうか。

工藤 SNSやネットの掲示板で「ホワイト案件」「高額」といった甘い言葉に誘われて、闇バイトに足を踏み入れるというのはよく報道されていますよね。それだけではなくて、先輩や友人といったリアルな知り合いから誘われ、断れずに関わってしまうこともあります。先輩や友人から勝手にSNSのグループに招待されて、それが闇バイトの入り口だった、というケースも耳にします。

坂下 悪意の有無はさておき、リアルな知り合いの誘いは断りにくいですね。長女は部活を頑張っていて、学校自体もバイトが禁止なので働いたことがないのですが、卒業してバイトをやるとなったら、きちんと注意しないといけないですね。長男も今は部活少年ですが心配です。「こんなメールに俺は絶対に引っかからない!」とは言うものの……。

工藤 でも最近は、より普通の仕事を装った「時給1500円」みたいな怪しげな勧誘も出てきているんですよ。

坂下 えっ。それは大人でも迷ってしまいそう! 月給68万円だったら引っかからないけど、時給1500円は「いいバイト」って思ってしまうかもしれません。工藤さんは日々接する子どもたちから、闇バイトに関する相談をされることはありますか。

工藤 年間1.7万人ぐらいの少年少女に関わっている中で「この仕事はどう思う?」と聞かれることがあります。危うそうだと思えば「一緒に会社名から調べよう」と言います。

坂下 様々な事件をニュースで見ますし、我が子が知らぬ間にそんな誘いに乗ってしまわないか、そういう不安はここ数年すごく強く感じています。もし巻き込まれてしまったらと想像すると……。すごくヒステリックに本人を怒ってしまいそうです。万が一、自分の子どもが闇バイトに関わったと知ったら、保護者としてどう対処するのがベストですか。

工藤 関わってしまったら必ず警察に相談してください。被害者がいるかもしれませんし、民間組織では介入できませんから。スマホのスクリーンショットなどを撮って、経緯が追えるようにしておくといいです。もちろん、そうなってしまう手前で、闇バイトのドアのノブに手をかけさせないことが大切です。

家族以外の「居場所や人」の存在

子どもをリスクから遠ざけたいと思っても、多感な時期の子育てにおいては、スマホの使い方や親子間のコミュニケーションも課題だ。自身で危険に気がついても、犯罪組織に巧妙な脅しをかけられるなどして、発覚が遅れたり、より大きなトラブルとなったりすることもある。こんな時に役立つのが、家族以外の「居場所や人」の存在だと工藤さんは言う。

工藤 バイト事情を考える上で、気にかけたい情報があります。例えば、昨今の報道を見ると、高校生でもかなりの割合でバイトを経験しています。このなかにはバイト代で家計を助けていたり、自分の学費を出していたりするなど、家庭の事情で働かざるを得ない子もいます。バイトをしないでも生きていける人と、バイトをしないと生きていけない人の世界線ができているわけです

坂下 確かに。「なぜ働くのか」は経済的な事情も含めて考えなくてはなりませんね。

工藤 あとは、坂下さんのお子さんが通う学校のように、バイトを禁止しているケース。禁止になっているなら安心かというと、そうでもありません。学校に報告せずにバイトをしている、しなければならない子どももいるわけですから、トラブルが発覚しづらくなります。そして禁止であるがゆえに、学校の注意喚起も乏しくなるので、そこが隙になる場合もあります。

坂下 我が家の事情で言えば「スマホはあくまで親が契約したものを貸し与えている」というスタンスで、「パスワードは変更不可」「必要に応じて見せる」などルールを設けています。それでも何もかもを把握することはできません。スマホ制限もバイト禁止も、完全に安心できる材料とは言いづらいです。いざという時に親を頼ってくれるのか、と思うこともあります。

工藤 両親と学校の先生以外に、気軽に話せる大人が身近にいるというのがいいと思います。それ以外で考えられる行動としては、保護者が地域で友達をつくることですね。子どもが小さい頃から大人とのつながりを持ちやすい環境を作っておくよう、早めに種まきをしておくといい。

坂下 そうですね。昔のように子どもが友達の家で遊んで、友達のお父さんやお母さんと話すという機会も減っているように感じます。コロナ禍以降、その傾向が強まっていますね。

工藤 共通の知人がいるのは安心ですよ。例えば、子どもが通っている床屋や美容院でもいいと思うんです。「そういえば、こんなことを言ってたよ」と、子どもの情報がふと入ってくるようにするとか。少しずつできることはあると思います。子どものコミュニティーは限定的です。だから、家族以外に信頼できる大人や居場所が重要だと思います。

坂下 こちらの「育て上げネット」はまさに居場所ですよね。どれぐらいの人が利用していますか。

工藤 3年前からは昼間の活動のほかに、「夜のユースセンター」という若者の居場所をつくり、土曜日は午後9時まで開館しています。現在では、1日に平均60人ぐらい利用しています。若者たちは楽器を弾いたりゲームをしたり、おしゃべりや食事をしたり。様々な交流があります。行政の担当者や学校の先生など、たくさんの見学・視察依頼があり、知っていただけるようにできるだけ受け入れています。

坂下 息子はゲームが好きなので喜びそうです。大人の中でどんなふうに過ごすのか、そういう姿を見ることも発見がありそうですね。

工藤 気兼ねなく話せて、相談できたり助けを求めたりできることが、闇バイトや青少年の問題の解決につながると思っています。東京都の若者をサポートするポータルサイト「若ぽた+」
(https://www.wakapota.metro.tokyo.lg.jp/)では、相談先を探したり、居場所を検索したり、様々な情報が出ていますよ。

坂下 ぜひ見てみようと思います。

稼ぐことの大変さ 伝えれば気づく

大学生が就職先を探す際には、多くの学校で指導やサポートの体制が整えられている。しかし、青少年が闇バイトを回避して安全に働くための手ほどきを受けられる機会は少ない。では、すぐそばにあるリスクを理解して、仕事を適切に選択するには、何が必要か。「相場を知ること」がカギになりそうだ。

工藤 私たちのNPOでは、地域のお祭りで屋台を出しています。この材料費が10万円で売り上げが20万円だとしますよね。粗利は10万円です。これを体験した子どもたちは「時給5000円で誰でもできるバイトなんて怪しい」とすぐにわかるようになります。経済の構造を知るための体験機会は大切です。

坂下 お金を稼ぐ大変さを知ることは必要ですね。息子が職業体験の一環で、100円ショップで働かせてもらったことがありました。楽しく充実していたようで、クタクタになって「働くって大変だね、しんどいんだね」と言いながら帰ってきました。そういう学びはいいですよね。

工藤 時間と数字で判断することが大事です。すごくお金を稼ぎたいとして、アルバイトで月に100万円を想像した時、ひと月(30日間)に相当する720時間の中で稼ぐならば、時給はいくらになるか。具体的にイメージすることで、「悪いことをしなければ稼げない金額だ」という感覚が養われるはずです。

坂下 まずは子どもと自分とのWチェックが重要ですね。あとは親の知り合いのような、安心できる関係で紹介されたものとか。

工藤 いいと思います。ゆくゆくは、本人と大人以外にも仕事の安全性を多重チェックできる仕組みが重要だと思っています。この仕事、この会社、この店舗が大丈夫なのかを判断する組織です。ハローワークのような職業紹介の場や、キャリアコンサルタントのような資格を持つ人材が活躍してくれたら、と期待しています。

坂下 そうなると安心感が高まりますね。工藤さんのお話を聞いて、もっと情報と向き合って、把握していかないとと感じました。それと相談場所を事前に把握しておくと安心ですね。

工藤 事前に情報に触れておくと、いざという時にパニックにならずに済みますね。何かあった時の手立てがイメージできていれば安心です。

坂下 一つずつ学んで、生かしていきたいと思います。とってもためになるお話を聞くことができました。ありがとうございました。

坂下千里子
さかした・ちりこ 1976年京都府生まれ。94年のデビュー以来、情報バラエティーから教養番組まで幅広く出演し人気を博す。結婚後は2人の子を育てる母親の視点でのコメントが支持を集めている。「ノンストップ」(フジ系)、「健康カプセル!ゲンキの時間」(TBS系)などにレギュラー出演中。

工藤 啓
くどう・けい 1977年東京都生まれ。米ベルビュー・コミュニティー・カレッジ卒業。2001年に任意団体「育て上げネット」を設立し、04年にNPO法人化。若者の孤立を防ぎ、社会とつなぐための多様なコーディネート事業に取り組む。著書に『無業社会』(共著・朝日新書)、『「ニート」支援マニュアル』(PHP研究所)ほか。

「怪しいな」「危ないな」と思ったら相談を

闇バイトに巻き込まれないためには、「一人で決めない、悩まない」が鉄則です。家族や友人など身の回りの人、警察、専門機関に相談しましょう。第三者の意見を聞き、その仕事が本当に安全か、甘い話にだまされていないか、冷静に判断することが大切です。

<相談窓口はこちら>
https://www.kagaiboushi.metro.tokyo.lg.jp/#contacts


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